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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)677号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人高山平次郎上告趣意について。

原判決は、その法律適用の説明において、所論のごとく昭和二二年法律第二四二號(原判決に第二四〇號とあるは誤記と認める)附則第二項、昭和十九年法律第四號經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法律第一條、同年勅令第二六八號第一條第一二號により判示地方食糧營團の職員名義の配給停止證明書は刑法上公務員の作るべき文書とみなされるものとし、判示被告人の昭和二二年七月二四日及同年八月五日頃のこれが偽造、變造及びその行使に對し刑法第一五五條第一、二項第一五八條第一項等を適用したことは所論のとおりである。そして右昭和二二年法律第二四二號附則第二項により同法施行(すなわち昭和二三年一月六日)前にした行為に適用される右昭和一九年法律第四號第一條にいわゆる「團體又ハ營團、金庫若ハ之等ニ準ズルモノノ役員其ノ他ノ職員ハ罰則ノ適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス」との規定はかかる團體等は国家総動員法に基き国家総動員上の必要により同種若しくは異種の事業の統制又は統制の為にする經營を目的とするものであり、從って、その役員その他の職員の権利義務は国家若しくは公共團體における官吏、公吏その他法令に依り公務に從事する職員の職権職務と実質上異るところないから、刑法上の公務員と同一の責任を負擔せしむると共に、同一の保護を與える必要上、すべての罰則の適用について刑法第七條の公務員と看做したものと解するを相當とする。されば右の罰則とは、所論のように役職員等が涜職、秘密漏洩等のごときその地位を濫用した不法行為に對する罰則のみを指すものではなく、第三者の為す公務執行妨害、公文書偽造、贈賄等のごとき被害者たる役職員保護のための罰則をも包含するものと解すべきである。それ故原判決の法律適用は正當であって論旨はその理由がない。

よって刑訴第四四六條に則り主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎)

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